研究概要

Objective on AEM Lab

環境微生物工学研究室では、「微生物の可能性を追求 〜知り、育て、環境浄化と資源循環に利用する〜」をテーマに有用微生物の機能解析に取り組んでいます。

人類は、これまでに有機溶媒など数多くの有用な化学物質を活用してきました。しかし、それら化学物質の環境中への漏出による土壌や河川の汚染は、地球規模で取り組むべき課題の一つとなっています。特に近年ではマイクロプラスチックと呼ばれる人工物による海洋汚染が非常に大きな環境問題となっています。加えて、近年の世界的経済成長による資源需要の拡大は、環境汚染のみならず廃棄物の増大や資源枯渇といった問題も生み出しました。これらの課題を解決するために、微生物の機能を利用して環境修復や有用物質生産を行う環境調和型技術の確立が期待されています。

私たちは、微生物機能を利用した環境負荷の低い物質変換技術を開発し、環境修復や廃棄物処理、有価物生産の実現に繋げることを目指しています。そのために、自然環境からユニークな物質変換能を持つ様々な微生物の発掘に取り組んでいます。そして、微生物の遺伝子や酵素、ゲノム構造を分子レベルで解明することで、有機性廃棄物等の不要物を効率的に有価物へと変換するシステムの構築に繋げたいと考えています。その成果は、汚染された環境の修復に貢献するとともに、廃棄物処理に伴う温室効果ガスの増加やエネルギー資源の確保といった課題を払拭できると期待されます。

主な取り組み

ゴム廃棄物を有価物へと変換するための微生物変換系の機能解析

天然ゴムは弾力性に富み、皮膜強度が高いことからタイヤやゴム手袋、カテーテルなど様々な製品の原料として幅広く用いられています。しかしそれら天然ゴム製品の廃棄物は焼却や埋め立てにより処分されているのが現状であり、廃棄コストや焼却時におけるCO2の排出が問題となっています。そこで天然ゴム製品由来の廃棄物を微生物により分解・低分子化し、再資源化することができれば、焼却処理で生じるCO2排出量の低減に貢献できると考えられます。当研究室ではこれまでに、ゴムを分解するユニークな微生物を取得し、ゴム分解に関わる遺伝子や酵素機能を分子レベルで解明してきました。近年では、ポリイソプレンゴムの分解産物が化石資源に由来する材料の代替となることが。それは、再生可能かつ食糧と競合しない生物資源(非可食性バイオマス)である天然ゴムの利用によって枯渇が危惧される化石資源の利用を抑制することが可能になることを意味しています。加えて、ゴムの分解産物から生分解性ポリマーの一種を生産できる可能性が見出されました。それらの微生物機能を利用することで、資源循環による持続可能な社会の形成に大きく貢献できると考えられます。