古川・佐藤研究室, Laboratory of Glycobiology
サイトマップ, Sitemap
お問い合わせ, Inquiry
ニュース, News 研究内容, Introduction of our study 研究室紹介, Introduction インフォメーション, Information リンク, Hyper link
introduction
investigation
achieve

研究紹介

 生体で作られるタンパク質の60%には、糖鎖が結合している。糖鎖は核酸やタンパク質と異なり、その構造を発生分化のプロセスで変化させる。 糖鎖の構造が変化するとタンパク質の機能が変化したり、個体レベルでは細胞が増殖異常を起こし、臓器を形成できず致死となる。このように糖鎖には生命の息吹が刻まれているが、その意味はほとんど解読されていない。この意味を明らかにすれば、生体の機能を調節する分子、快適な居住空間、機能性食品などの新たな工学的機能物質を開発することができる。
 本研究室では、1) 生体における糖鎖の機能を読み取るマシーン (糖鎖結合タンパク質) を網羅的に解析し、糖鎖の機能を記した辞書作りを行なう、2) 構造変化する糖鎖から細胞の生理状態を読み取り、加齢・疾患のバイオマーカーとしての有用性を追及する、3) 予防医学的見地から糖鎖機能を取り入れた生活用品や食品を開発することを目指して、研究を行なう。

  1. 糖鎖を介した神経細胞の増殖分化機構の解明
  2. 糖鎖を介した細胞の増殖制御機構の解明と応用
  3. 生活習慣病と螓液タンパク質の糖鎖修飾の関係
  4. 細胞核タンパク質は糖鎖修飾を受けているか?
  5. プラナリアの再生と糖鎖修飾

1. 糖鎖を介した神経細胞の増殖分化機構の解明

 神経細胞に固有に発現するN-アセチルグルコサミン (GlcNAc)をもつ糖鎖をGlcNAcと結合するタンパク質 (レクチン) をコートしたプレート上で培養すると、MAPキナーゼやPKCの活性化を阻害し、増殖・分化を阻害した。脳にGlcNAc結合タンパク質が存在すると予想されたので、マウスの脳からGlcNAc結合タンパク質を探索したところ、Na+/K+-ATPase β1-サブユニットがその活性をもつことを見いだした。神経細胞の凝集塊に抗β1-サブユニット抗体やハプテン糖を加えると凝集が阻害されることから、β1-サブユニットは隣接細胞の糖鎖と結合することで細胞接着に関与している可能性が考えられた。Na+/K+-ATPase は細胞の浸透圧を調節する働きをもつ生命に必須の分子であり、この機能はα-サブユニットが担っている。β-サブユニットはα-サブユニットの立体構造を保つことで、その働きを助けていると考えられてきたが、β1-サブユニット自身にも固有の機能が存在することが判明し、新たな細胞接着分子としての働きの解明が待たれる。

  1. Kitamura, N., Ikekita, M., Sato,T., Akimoto, Y., Hatanaka, Y., Kawakami, H., Inomata, M., and Furukawa, K. (2005) Mouse Na + /K + -ATPase β1-subunit contains a K + -dependent cell adhesion activity to β-GlcNAc-terminating glycans. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 102,2796-2801.


2. 糖鎖を介した細胞の増殖制御機構の解明と応用

 細胞が癌化するとタンパク質に結合した糖鎖は高分岐化し、この時糖鎖のガラクトシル化に関与する酵素 (β-1,4-GalT) IIやVの遺伝子発現が変化する。 遺伝子操作によりB16-F10マウスメラノーマ細胞でβ-1,4-GalT II やβ-1,4-GalT Vの遺伝子発現を正常方向に戻すと、in vitroでの細胞の増殖が25~40% 抑制され、部分的な細胞接着が観察された。細胞表面の糖鎖は多様に変化し、増殖に関与する糖鎖は特定できなかったが、ガラクトースと結合するタンパク質としてガレクチン-3を見いだし、その役割を解析している。また上記の遺伝子を導入すると、細胞の増殖に関与するMAPキナーゼの活性化が低下した。 以上の知見から、β-1,4-GalT 遺伝子の導入により癌細胞の細胞表面の性質(糖鎖修飾)が変化し、その結果細胞が部分的に接着し(ガレクチンが関与か?)、接着シグナルがMAPキナーゼの活性化を抑制し、その結果遺伝子導入癌細胞の増殖が抑制されたものと考えられた。一方、癌細胞でβ-1,4-GalTV遺伝子の発現制御機構を解析し、転写因子Sp1が関与していることを明らかにした。さらに、癌細胞におけるβ-1,4- GalTV遺伝子の発現はSp1のDNAへの結合を阻害する薬剤で減少し、β-1,4-GalTV遺伝子の発現を転写因子レベルで制御することでも癌の悪性度を改善することができる可能性を見いだした。


  1. Furukawa, K., Sato, T., and Shirane, K. (2001) Suppression of tumor growth by transfection of human β-1,4-galactosyltransferase gene into B16-F10 mouse melanoma cells. Glycoconj. J. 18, 165.
  2. Sato, T., and Furukawa, K. (2004) Transcriptional regulation of human β-1,4-galactosyltransferase V gene in cancer cells: Essential role of transcription factor Sp1. J. Biol. Chem. 279 (38), 39574-39583.
  3. Sato, T., and Furukawa, K. (2007) Sequential action of Ets-1 and Sp1 in the activation of the human β-1,4-galactosyltransferase V gene involved in abnormal glycosylation characteristic of cancer cells. J. Biol. Chem. 282 (38), 27702-27712.
  4. Tadokoro, T., Ikekita, M., Toda, T., Ito. H., Sato, T., Nakatani, R., Hamaguchi, Y., and Furukawa, K. (2009) Involvement of galectin-3 with vascular cell adhesion molecule-1 in growth regulation of mouse Balb/3T3 cells. J. Biol. Chem. 284, 35556-25563.


3. 生活習慣病と血液タンパク質の糖鎖修飾の関係

 糖鎖のバイオマーカーとしての有用性を、生活習慣病との関係で解析した。糖尿病、高脂血症、高血圧、これらの合併症のヒト血液からタンパク質画分を調製し、レクチンブロットで糖鎖修飾を解析すると、糖尿病と高脂血症の合併症で著しい糖鎖構造の変化が検出された。今後、この変化が病態とどのように相関するかを解析し、有用性を検討する。



4. 細胞核タンパク質は糖鎖修飾を受けているか?

 これまでN-型糖鎖修飾を受けているタンパク質は、シグナル配列をもつ細胞外マトリクスや細胞膜を構成するタンパク質である。それでは細胞質や細胞核に存在するタンパク質は、N-型糖鎖修飾を受けないのであろうか。こうした単純な疑問の下、各培養細胞を細胞分画し、含まれるタンパク質の糖鎖修飾の有無をレクチンブロット解析により調べている。すると幾つかのタンパク質ではN-型糖鎖修飾を受けいる可能性が見いだされ、その構造と機能を解析している。


  1. Guo, S., Mori, H., Matsuda, T. and Furukawa, K. : N-linkedoligosaccharides attached to bovine histone chromosomal proteins are β-N-acetylgalacto-saminylated. 2nd Inern. Sympo. Glycosyltransferases, Toronto, Canada, 2000. 5. 12-14.
  2. Funatsu, O., Ikekita, M., and Furukawa, K. (2001) Occurrence of the soluble form of tenascin-R with age-associated changes of glycosylation in rat brain. Res. Commun. Biochem. Cell & Molec. Biol. 5, 85-94.


5. プラナリアの再生と糖鎖修飾

 哺乳動物の個体発生や細胞分化において細胞表面糖鎖は著しく変化し、変化した糖鎖は細胞間接着に関与したり、結合しているタンパク質の機能を制御していることが知られている。幹細胞を用いた細胞の分化誘導の研究は細胞の維持等が大変であるが、再生能が高い扁形動物に属するプラナリアは大学近くの山河で採集できる。そこで採取してきたプラナリアを飼育しながら、胴体切断後に見られる再生過程で糖鎖の働きを解析するを始めている。プラナリアはN-型糖鎖として高マンノース型糖鎖を主にもつことがCon Aとの結合で判明しているが、さらに複雑な構造をもつことが明らかになりつつある。こうした糖鎖が再生のプロセスにどのように変化するのか、変化するならばその意義は何かと、楽しみな課題である。これまでに、複数の糖鎖結合タンパク質が単離またはその遺伝子がクローニングされてきた。



著作権表示, Copyright