研究室

環境生物化学研究室

酵素や微生物は常温・常圧で複雑な反応も効率的かつ特異的に行うことができることから,安全,省エネルギーでクリーンな環境に優しいプロセスやデバイスの開発に有用です。私たちの研究室では,新規で有用な生物機能を見つける(自然環境からの微生物のスクリーニングやゲノム情報解析による有用な微生物,酵素や遺伝子の発掘),良くする(ゲノム工学や遺伝子工学技術を駆使した微生物や酵素の改良),利用する(新たな環境浄化技術,物質生産プロセスや分析技術の開発)ことで,環境,エネルギー,化学工業,食品産業や医療などの様々な分野に貢献することを目指しています。

スタッフ

※令和3年3月をもちまして解良芳夫 教授はご退職されました。
高橋 祥司 教授 高橋 祥司
     

研究プロジェクト

難分解性難燃剤の微生物分解の解明と分解除去技術の開発
ポリウレタンなどのプラスチックを燃えにくくする難燃剤(リン酸トリス(2-クロロエチル)は世界中で多量に使用されてきました。その結果,この化学物質による河川や湖沼の汚染が世界各地で引き起こされています。また,水道水の汚染も報告されています。この化学物質は安定であり,発がん性,生殖毒性や神経毒性を有することが指摘されていることから,ヒトを含む生態系への悪影響が懸念されています。私たちは,この化学物質を分解する細菌を世界で初めて見出し,本菌を用いた環境浄化技術の開発に取り組んでいます。
D-アミノ酸代謝酵素の機能解明と応用
グリシンを除くアミノ酸にはL体とD体の鏡像異性体が存在しますが,長い間,生体ではD-アミノ酸はマイナーな存在とみなされてきました。しかし近年,D-アミノ酸が多様な生物に見いだされるとともに,病気との関連も明らかとなってきました。そこで,高感度で迅速かつ簡便なD-アミノ酸分析技術の開発が求められています。私たちは,微生物に新しいD-アミノ酸代謝酵素を発見するとともに,タンパク質工学的手法により改変し,D-アミノ酸代謝酵素を用いた高感度で迅速かつ簡便なD-アミノ酸の分析技術の開発を進めています。
バイオ燃料生産のための酵母の改良
近年,化石燃料の使用による地球温暖化や環境汚染,またその枯渇の懸念から,草や木材などの未利用バイオマスから作られたバイオ燃料の利用が期待されています。酒やパンを作る酵母の仲間には,草や木材を構成する糖から,軽油として用いることができるバイオディーゼル燃料と呼ばれる燃料の原料となる油脂を多量に生産する油脂生産酵母と呼ばれる酵母がいます。私たちは,この油脂生産酵母の遺伝子組換え技術を開発することに成功し,地球に優しいディーゼル燃料の効率的な生産技術の開発に取り組んでいます。
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図1:難分解性難燃剤を分解する Sphingobium sp. TCM1
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図2:耐熱性D-アミノ酸オキシダーゼの三次元モデル構造
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図3:油脂蓄積酵母の顕微鏡写真(左)と油脂蛍光染色像(右)

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