微生物代謝工学研究室
樹木の細胞壁成分の約15~30%を占めるリグニンは、地球上で最も多量に存在する芳香族資源ですが 、構造が非常に複雑で分解され難く、有効な利用法が開発されていません。当研究室では、リグニン中に存在するさまざまな種類の分子間結合をもつ二量体芳香族化合物を分解できるバクテリア Sphingobium sp. SYK-6 株のリグニン代謝系を明らかにすることによって、これら代謝系を利用してリグニンを有用物質に変換するバイオプロセスを構築し、さらにはバイオエタノール生産やリグニンの利用に好適な構造に改変したリグニンを持つ植物を創出することを目指しています。
スタッフ
教授 政井 英司
准教授 上村 直史
研究プロジェクト
- 樹木芳香族成分・リグニンの生分解
- リグニンは、植物細胞壁の主要成分であり、地球上で最も豊富な芳香族高分子です。自然界においてリグニンは、白色腐朽菌等の真菌が分泌する酵素によって低分子化され、その後、バクテリアによって代謝を受けて無機化されると考えられています。当研究室では、高分子リグニンの分解によって生成する多様な二量体・単量体芳香族化合物を分解できる Sphingobium sp. SYK-6 株の代謝系を解析しています。
- バクテリアのリグニン由来芳香族化合物代謝系
- 当研究室ではこれまでにリグニン由来の二量体であるβ-アリールエーテル、ビフェニル、フェニルクマラン、そしてこれら化合物の代謝過程で生成するバニリン酸、シリンガ酸、フェルラ酸等の代謝システムを明らかにしてきました。現在、バクテリアによるリグニン由来芳香族化合物の代謝システムの完全理解を目指し、化合物の細胞内への取り込み(膜輸送)、代謝酵素および遺伝子の機能、遺伝子の転写制御システム、そして細胞全体のゲノム・転写・代謝挙動(オミックス)について解析に取り込んでいます。
- 有用物質生産のための微生物機能の利用
- 現在、化石資源の消費に伴う二酸化炭素の排出は地球規模課題として位置づけられており、低炭素社会の構築が急務となっています。この状況下で、豊富な存在量をもち未だ有効な利用法が確立されていないリグニンの利活用が大きく注目されています。当研究室ではSYK-6株などのバクテリアの代謝能力を利用した微生物発酵による樹木リグニンからのプラスチック原料化合物の生産などの応用研究にも取り組んでいます。